天災の少ない佐賀県に工場立地。
「メイドイン佐賀」の化粧品を世界に届ける
東洋ビューティ株式会社
代表取締役社長
岩瀬 史明 氏
1941年創業で、医薬部外品、化粧品をODM/OEMで受託製造する東洋ビューティ株式会社。化粧品業界への参入や、製造部門のアウトソーシングを考えるさまざまな事業者のニーズに応じて、企画開発から製品化・生産までを一貫して請け負っています。2019年には佐賀県神埼市で自社最大規模の工場を操業しました。佐賀県への進出には、BCPの観点での天災の少なさや、会社の苦境期に九州で受けた「恩義」への感謝の気持ちなどがあったといいます。
地方への進出を考えられたきっかけは?
当社は現在、化粧品製造の拠点として関東の宇都宮第一工場・宇都宮第二工場、関西の上野工場、そして2019年に操業した九州の佐賀工場という3拠点4工場の生産体制を構築しています。佐賀に進出する前段階で、新工場建築の検討を始めたのは2011年のことでした。3月11日の東日本大震災で、宇都宮工場が甚大な被害を受けたためです。死傷者がいなかったのが幸いでしたが、被災した工場は約3カ月間、稼働を停止せざるをえませんでした。それ以来、BCPの観点から西日本を対象に、幅広く新たな土地を探すことになりました。進出する地域には地震などの天災の少なさやロケーションに備わる利点などを重視しました。
佐賀を進出先に選んだ理由は?
工場の進出地に佐賀県を選んだのには、いくつもの理由があります。まず挙げられるのは、地震のみならず、津波、火山、大雪といった自然災害が少ないこと。2つ目は、アジアに近いロケーションです。将来の市場である中国や東南アジアが近く、空港や高速道路など交通アクセスの利便性の高さも評価しました。
3つ目は、佐賀県が推進するコスメティック構想です。佐賀県は、フランスにある世界最大級の化粧品産業クラスター「コスメティックバレー」と連携し、新しいコスメの産業集積地帯を目指して産学官が連携する仕組みもつくっています。コスメ業界には、期待が高まる取組です。
4つ目はなんといっても佐賀の人柄です。自分に厳しくも人情にあふれる面や、冷静ながらも熱意を感じる面、人の優しさを感じました。山口佐賀県知事の情熱にもほだされました。
そして最後に、創業者の「九州に恩返しをしたい」という思いです。当社は、戦後に倒産寸前の危機に瀕しましたが、九州の化粧品問屋の社長が大金の支援をしてくれたおかげで事業は持ち直しました。このときの恩義を忘れてはならないと考え、九州での事業を実現させました。
佐賀県に進出して良かったことは?
県が推進する「コスメティック構想」また「ジャパン・コスメティックセンター」の取組において、県庁に「コスメティック構想推進室」があり、当社に興味を持っていただいて産官連携でのモノづくり・環境づくり・地方創生を描くことが出来る事です。
2021年に佐賀県庁主催で開催された「佐賀県企業立地ウェビナー」では、弊社をご紹介いただき、大変反響をいただきました。大手新聞社にも何度もご紹介いただくなど企業PRの後押しをいただいていることを有難く感じています。
2020年、2021年とコロナ禍において具体的な成果はこれからとなりますが、良い環境・土壌がなくては、良いモノは育たないと感じております。
当社は佐賀県から世界を見据えておりますが、まずは佐賀の人々に「東洋ビューティに進出してもらってよかった」と思ってもらえる企業でありたいと思います。
佐賀県での今後の展望は?
佐賀工場は、2019年10月に化粧品の製造の品質・安全性に関する国際規格(化粧品GMP)である「ISO22716:2007」を認証取得しました。品質と環境のマネジメントシステムのISO14001・ISO9001も2021年に追加登録しています。世界に通用する厳しいレギュレーションに対応している佐賀工場で、「Made in Japan,Product Toyo Beauty」の化粧品を生産し、「メイドイン佐賀」を世界に発信したいと考えています。将来的には、美の発信基地としてさまざまな機関や組織と連携し、オープンイノベーションを実現していきたいと思います。
佐賀の事業所ではどんな取組をしていますか?
佐賀工場は、「みせる工場」というコンセプトで建設しました。「みせる」には「見せる」と「魅せる」の2つの意味があります。工場は明るいガラス張りで、製造・充填・包装部門を見学できる通路に加え、歴史を伝えるミュージアムを併設しました。生産するだけの場ではなく、一般来訪者や学生が化粧品や化学を理解し、学べる場となっています。佐賀の地元の子どもたちにも工場見学に来てもらって、化粧品に興味を持ってもらったり、ここで働きたいと思ってもらえるような、魅力と感動のある佐賀工場であるための取組を続けていきます。
また、佐賀工場で働く人たちの家族や親類、友人にも佐賀工場に来ていただきたいと考えています。従業員の健康や安全面にも最大限に配慮した現場を実際に見て知ってもらうことで、安心や信頼をも感じていただきたいと思っています。